TVで91歳の料理研究家の先生が「創作で行き詰ったら異質を取り込むのよ」と言っていた。彼女の原点は病苦の父のためにつくった「命のスープ」。8年も病で寝ていた彼女の父に「なんとかおいしくて栄養のあるものを食べてもらおう」と思い、ふと、日本に昔からあるおかゆに西洋のスープをかけてみた。なんとこれだけでもう立派なリゾット。簡単で栄養満点で「おいしい、おいしい」の逸品になった。この発想法でその後を築いた御大の料理教室は入るのに3年待ちだとか。
これまたTV。NHKプレミアムのThe Coversという番組で井上陽水がサルサバンド“オルケスタ・デラ・ルス”の演奏をバックに宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」をカヴァーしていた。母親である藤圭子譲りの恨み節的失恋ソングが、サルサのリズムという異質性で料理されて、やばいほど大人な、「ホテルはリヴァーサイド~」的パフォーマンスになっている不思議。カヴァーと言えば元の歌手がどっかで思い起こされるアレだと思ってた身には、目からうろこのため息。
異質性を取り込んで、は誰言わなくても世の中、あっちこっちで大勢の達人がやってきた技。このスパイスで料理はいろいろなヒトの手にかかって無限においしくなっていく。
[2015.03.13]