「トップページ、どうしましょうか」。ウェブサイトをつくることになりデザイナーさんからお尋ねを受けたとき、迷わず、シチリアのクラシックホテルの朝の食卓をとお願いした。
昨年の5月、南イタリアの長靴のつま先のその先、地中海に浮かぶシチリア島を訪れた。群青の海と空。花に充ちて海岸を見下ろす崖に貼りついて建つクラシックホテルがサン・ドメニコ・パレス。16世紀につくられた僧院を改装したものだという。
上質のリネンにくるまってよく眠った翌朝、食堂に降りていったときだった。ウエイターに案内されたのは、食堂の室内テーブルではなく地中海を見下ろすテラス席。予想をうまく裏切られて眠気が吹っ飛んだ。目に映った食卓にはホテルのオリジナルデザイン入りのコーヒーカップがふたつ。同じ柄を染め抜いたミルク色のテーブルクロスに揺らぐ太陽光のかけら。
思いもかけない演出と黒髪に白シャツの給仕人の洗練された温かさに、大き目サングラスを思わずはずせばこれから始まる一日の楽しさの見事な序幕は一段と明度をあげて、これぞ期待以上のサービスだと感じた。クラシックホテル好きであちこちに出かけるが中庭にまで果物が豊かに実る土地だからこそのオレンジの絞りたてジュースや焼きっぱなしの何品ものケーキ、焼きトマトまであるビュッフェは海洋性気候の風もごちそうでこのうえなく豊かな朝ご飯。
日本のホテルの水も漏らさぬ接遇とは違うけれど、ウェブサイトのなかでどんな料理が登場するのか、「お客さま、どうぞ、ごゆっくりご賞味ください」のメニューをお渡しするトップページにはこの雑味あるぬくもりがぴったりかと。人が好き。まちづくりが好き。そんなまなざしでこの食卓にお皿を並べたい。
みんながローカルとグローバルを躊躇なく行き来する未来をマジ信じて、泥臭さありの地域と海の向こうの世界との混在を試みる。「突拍子もない」と人に言われるこころっとコンサルティングゆえに多少のびっくりはお許しを。「ひととき遊んでいただければうれしいです」のウェブサイトを企んでいる!
[2014.07.18]