レフェリー付き論文。日本経営診断学会学会賞奨励賞 受賞。
本論文の目的は共同体が組織化に向かうための法則を解き明かすことにある。関係を組み換えて価値を創り出す組織化の仕組みをプラットフォームと置く。そのうえで論者の知る限りこれまでの研究ではプラットフォームの構築手法に十分言及されたものがないことを述べ、その構築プロセスの分析を進めた。まず組織化の必要条件としてプラットフォームビジネスの成功事例とされる楽天創業者三木谷が社員育成のために著した『楽天社長講話』(三木谷, 2006, 非公開資料)にある組織化25ポイントと、これまでの論者研究でまとめた組織化法則性25ポイントを比較しながら異同を議論した。結果としてコンセプチュアルスキル、テクニカルスキル、ヒューマンスキルに分けて組織化の法則性をまとめた。次に十分条件として S-Dロジックを用いてすべてのサービスシステムはプラットフォームの仕組みをもつことを述べ、事例としてノーベル賞を得た社会企業であるグラミン銀行もプラットフォームを基盤構造とすることを示した。結論ではプラットフォーム構築には一定の法則性があり、その構築は営利企業のみならず、社会性と経済性の統合を目的とするすべての互恵の仕組みづくりに欠かせないことを提示した。
[2014.05.26]
林大樹、辻朋子共著
P.55—P.59
地域コミュニティが直面する課題解決のために、大学と地域が協働する事例が増えている。それは大学にとっては社会貢献の側面があり、同時に座学による知識伝達中心型教育に替わって、体験学習による知恵創出型教育を模索する活動である。一方、地域はこれまでの既存性に支配された経営の閉塞状態に危機感をもち、新奇性としての新しい要素である学生を受け入れはじめている。こうして異質性が社会的な必要性によって出会うことで互いの課題解決能力が増す。本研究ではこのようにして進む組織化をソーシャル・イノベーションととらえ、著者たちの実践例を紹介する。
[2014.05.26]
本研究では共同体が自己組織化する過程を原理追究と実験の繰り返しにおいて探究した。以上を統合し、組織化を実現する自己創出構造をスパイラルモデルによって表すことを試みた。自己組織化の仕組みは社会のなかでサービスが充実していない領域での共同体参加者のサービス創発行動によって説明した。以上の考察を通して「行動を通して学習する」共同体を実現させるための組織化に向けて行動指針を提示した。
(124頁)
[2014.05.26]
レフェリー付き論文。
P.9—P.14
本研究は不可視のサービス機能の変容を通して共同体を閾値の突破に向けていかにファシリテートするかの議論である。触媒機能を持つヒトや組織をセレンディピティと位置づけ、共同体に組み込む仕組みから不可視サービスが可視化するプロセスの解明を試みる。セレンディピティ機能の参入によって既存組織にゆらぎが増幅し、混沌から秩序が形成される仕組みが自己組織化の本質であることを論証する。結論としてこうしたモデル創出を支援するのがファシリテータの役割であることを述べた。
[2014.05.26]
P.9—P.14
学生参加のまちづくりという形を取った体験学習による大学教育の模索と、社会そのものが既存の価値観にとらわれずに内側から変革していこうとする動きの遭遇を共同体の自己設計化の事例ととらえる。そのうえで平成14年ごろから増加し始めたこうした動きについて、触媒機能と散逸構造との仕組みから迫る。共同体における新たなサービス創発は、学生、商業者、行政、市民等が互いに自己触媒機能を惹き起こす過程で散逸構造の状態にまで組織化が高進するなかで生み出されることを説明した。
[2014.05.26]
レフェリー付き論文。
P.26—P.37
組織化の原点はヒトの関係性構築であることを考えれば、サービスコミュニティとは一対のヒトを起点にしたコミュニケーションのつらなりが生む社会システムである。それは有機的なプラットフォームととらえられ、ヒトが持つ既存の社会価値観と、その逸脱とのせめぎあいのなかから創出され、持続し続ける。本論では実験と原理追究の統合からその本質を探究した。その結果、コミュニティの仕組み解明因子は時間、空間、資源の三軸であると考察した。
[2014.05.26]
レフェリー付き論文。
P.17−P.27
本研究の問題意識の根幹はコミュニティのなかに意図的に異能集団の遭遇をつくりだすことによって、生活の領域に欠けていたサービスを創出する仕組みがいかに設計されるかを知ることにある。学生、商業関係者、企業、行政、市民等からなる多様な組織がサービス創出に向かって連携を進める様相を有機的な経営体ととらえ、サービスコミュニティと置く。そのうえで生活領域は参加者によって自発的にどう設計されるのかについて検証を進めた。
[2014.05.26]
学生活動を基軸に社会に必要なサービス機能を創出し、そのプロセスを通じて共同体に一体感を創り出すことを進めてきた筆者の継続研究の原点である。武蔵野市における学生参加の商店街活性化事業を実験と位置づけ、異能集団の掛け算効果でカオスを起こし、先入観のない発想でサービスのニーズを発見し、ゆるやかな戦略シナリオで行動を通じて学習しながら理想形に近づくのが共同体の組織化の仕組みを探究した(100頁)。
[2014.05.26]